ジョージ・ベンソン、マーカス・ミラー、ゴーゴー・ペンギン―〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉が一層気になる各アクトの注目ポイントをズバリ解説! Pt.2 その2>>
text=Hikaru Hanaki
フェスの概要を伝えた第1回特集「〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2016〉で特別な体験ができる3つの理由」に続き、ここでは2回に分けて、メイン・ステージとなる 〈BIRD STAGE〉と〈DIZ STAGE〉に出演する6組の見どころを解説していく。 紹介役を務めるのは、去る8月に開催された本フェスのプレ・イヴェントでもトーク&DJで会場を盛り上げた、R&B/ソウルに精通する音楽ジャーナリストの林剛氏と、〈Jazz The New Chapter〉シリーズ監修の柳樂光隆氏。今回は〈BNJF〉のジャズ・サイドを担うジョージ・ベンソン、マーカス・ミラー、ゴーゴー・ペンギンの3組をピックアップ!
(写真左から)柳樂光隆、林 剛
GEORGE BENSON
林 剛「ジョージ・ベンソンはギタリストであり、ヴォーカリストでもあるから、ソウル・ファンにとっても聴きどころがあるんですよね」
柳樂光隆「80s好きのソウル・バーに行くと、よくかかってる印象です。トミー・リピューマ※周辺が好きな人が聴くアーティストという感じですよね」
※イエロージャケッツ、マイケル・フランクス、YMOなどに携わったアメリカを代表するプロデューサー。マイルス・デイヴィスの86年作『Tutu』ではマーカス・ミラーと共同プロデュースを務めている
林「特に80年代前後の作品はAORのファンに人気ですよね。ボズ・スキャッグスとか、ああいう流れで当時はたぶん聴かれていたはずなんですよ。基本的にはギタリストとして脚光を浴びているわけですが、ヴォーカリストとしても注目されるようになったのは『Breezin’』(76年)から。でも、もともとヴォーカル・グループでも歌ってた人なんですよね。で、トミー・リピューマに促されて本格的に歌いはじめたという」
76年作『Breezin’』収録曲“This Masquerade”
柳樂「ギタリストとしての見どころは、やはり代名詞でもあるオーセンティックなオクターヴ奏法。マイルス・デイヴィスのレコーディングにも参加したことがあるし、ルー・ドナルドソンの『Alligator Bogaloo』(67年)とかソウル・ジャズ名盤にも参加していて」
林「僕、オクターヴ奏法が大好きで。あれが入ってると僕のなかで名曲になっちゃう(笑)。やっぱり、あの演奏を野外で、横浜の風を浴びながら聴くのは気持ちいいと思いますよ」
柳樂「なんせ〈ブリージン〉ですもんね(笑)」
林「そうそう、〈ブリージン&ウィークエンド・ヨコハマ〉って感じで(笑)これは世代とか関係なく、みんな気持ちいいんじゃないかな」
76年作『Breezin’』収録曲“Breezin’”のTVパフォーマンス映像
柳樂「最近は、日本の若いバンドもAORっぽい音を採り入れたがってるじゃないですか。だから若い人が聴いても楽しめると思います。日本では再評価の文脈があまりないけど、アメリカ版のWax Poeticsだと、ベンソンやジョージ・デュークがいまでも表紙になってたりするんですよね。〈ヒップホップ・カルチャーから見たブラック・ミュージック〉みたいな文脈で、ちゃんと捉え直されていて」
林「そういう話だと、ア・トライブ・コールド・クエストがベンソンの“Valdez In The Country”をライヴでほぼ1曲流して、スクラッチを刻むという場面をビデオで観たことがあって。それがすごく印象的です。原曲はダニー・ハサウェイで、最近だとテラス・マーティンが『Velvet Portraits』(2016年)で、“Valdez Off Crenshaw”という彼の地元版のタイトルでカヴァーしていて」
柳樂「ああ、ありましたね」
林「あと、ベンソンは今年亡くなったモハメド・アリの伝記映画『アリ/ザ・グレーテスト』(77年)の曲(“The Greatest Love Of All”)を歌っているんですよ。ホイットニー・ヒューストンによるカヴァーのほうが有名ですけど、それも追悼としてやってくれたら嬉しいです」
77年作『In Flight』収録曲“Valdez In The Country”
78年作『Weekend In L.A.』収録曲“The Greatest Love Of All”
林「あと、90年代以降のリスナーに向けてということだと、柳樂さんがこの前のプレ・イヴェントでかけていたニューヨリカン・ソウルの作品にもベンソンが参加しているんですよね」
柳樂「そうそう。これはマスターズ・アット・ワークのルイ・ヴェガとケニー・ゴンザレスが、70~80年代のダンス・ミュージックを90sハウスのフォーマットに落とし込もうとしていたプロジェクトで、そこにベンソンも呼ばれてギターを弾いて歌っているんです。メロウなギター・ハウスみたいな感じで」
ジョージ・ベンソンが参加したニューヨリカン・ソウルの97年作『Nuyorican Soul』収録曲“You Can Do It”
林「〈ニューヨリカン・ソウル〉っていうのは、NYのプエルトリカンによるソウルということですよね。彼らのコミュニティーでも、ベンソンみたいな音楽が流れていたんでしょうね」
柳樂「といっても、もう20年前の話なんですけどね(笑)」
林「97年ですからね。それでもニューヨリカン・ソウルがいまだに新しいものとして見えちゃうところはありますよね、ベンソン目線だと(笑)。まあ、ベンソンはその後も自分のアルバムでマスターズ・アット・ワークと一緒に曲を作っていて。あとは2000年代に入ってから、R&Bシンガーのジョー一派と一緒に曲を作っていたりもしています。いずれにしても、ベンソンは昔からその時代ごとにR&Bとかの一流プロデューサーを使って歌ものを吹き込んでいるのがすごいですよね。ヒップホップにおけるサンプリングもあたりまえのように多い」
柳樂「ハーレム・アンダーグラウンド・バンド(ベンソンが率いたファンク・バンド)はレア・グルーヴの流れでお馴染みですよね」
ハーレム・アンダーグラウンド・バンドの76年作『Harlem Underground』収録曲“Smokin Cheeba-Cheeba”
クインシー・ジョーンズがプロデュースした80年作『Give Me The Night』収録曲“Give Me The Night”。DJジャジー・ジェフやブレイクボットなどが後にサンプリングしている
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